BASIC KNOWLEDGE OF COFFEE コーヒー豆基礎知識

1.植物学的なコーヒー

植物学的なコーヒー

コーヒーはアカネ科の常緑樹で、生育可能地域は南北緯度25度までの熱帯、亜熱帯地方のコーヒーベルトと呼ばれるところに集中しています。

種子(コーヒー豆 coffee bean)…コーヒー豆
外皮(outer skin)…科外側の肉質の皮
果肉(パルプ pulp)…甘いゴム質
内果皮(パーチメント perchment)…茶褐色の固い皮
銀皮(シルバースキン silver skin)…薄い銀色の皮・種皮
センターカット(center cut)…胚乳部の亀裂
胚乳

2.コーヒーの品種

コーヒーの品種

商業上、アラビカ種カネフォラ種(俗称ロブスタ種)の2種類が世界で栽培されています。
この2つの「種」は、植物学上は別の種類の植物で、通常自然交配できません(アラビカの花粉がカネフォラの花についても実がなりません)。アラビカ種の中には、ティピカ、ブルボン、ゲイシャ等の「品種」があります。それぞれ突然変や交配によって、いろいろな栽培品種があります。
また、ティピカやブルボン、ゲイシャは原種と呼ばれ、エチオピア・イエメンから持ちだされた木の性質を受け継いでいます。生産量は少なく、木が大きくなり収穫しづらく、病気にも弱いですが、コーヒーの風味は良いといわれます。
一方、カトゥーラ、カトゥアイ、ムンドノーボなどは、ティピカやブルボンから突然変異や自然・人工交配で生まれた品種で、原種よりも生産性が高く、栽培しやすいですが、風味はやや劣るといわれています。しかし、近年では、パカマラマラカトゥーラ、ルビーなど、品質(風味)をコンセプトに作られた改良品種もあります。
また、最近ではコロンビアのカスティージョ、コロンビア品種、ブラジルのIBC12などハイブリッド種(人工的にアラビカとカネフォラを掛け合わせたもの、商業上はアラビカとして取り扱われる)も増えてきています。
カネフォラの耐病性を備えますが、基本的にアラビカの性質(風味、豆の形、栽培環境など)をもちます。ハイブリッド種は味が悪いという話もありますが、一概にはいえません。
「品種は○○が良い、▲▲はダメ」という話もきかれますが、大まかには当てはまっても、全て当てはまるわけではないようです。ハイブリッドでも品評会で上位を受賞することも多々あり、一概にはいえません。品種と土壌・気候との相性あり、品種や標高だけでなく、世話の仕方、肥料のやり方、収穫の丁寧さ、生産処理の技術など、さまざまな要素もあって、コーヒー生豆の品質につながっていると思われます。
なお、世界で生産されているコーヒーは約1億3,000万袋(60kg換算)ですが、アラビカ種が60%、カネフォラ種が40%の生産比率となっています。(2012年現在)

3.コーヒーの成育条件

コーヒーの成育条件

アラビカ種の生育条件は、日中の平均気温が20度前後、また気温の年較差の少ないところが良いとされますが、一日の気温較差(一日の最高気温と最低気温の差)は大きい方が良質な豆が育つには有利です。そのため、内陸で標高の高いエリアがアラビカ種コーヒーの名産地になってきました。
しかし、アラビカ種は霜に大変弱いので、あまり標高が高すぎても育ちません。一部の例外を除いて、赤道から離れた産地ほど、栽培可能な標高は低くなっていきます。年間雨量はアラビカ種の場合2,000mm前後必要で、十分な日照があるこが望ましいとされます。
カネフォラ種の場合はもう少し高温の場所(標高の低い場所)で栽培されています。カネフォラ種の方は耐病性が強いです。

4.植え付け〜収穫

植え付け〜収穫

コーヒーの木は、苗床で播種(種まき)されてから大切に育てられ、成長の状態を見て土壌に植え返されていきます。ブラジルなどでは苗床で1年間、他の産地でも6ヶ月程度は苗床で成長したものを植え返しているのが一般的です。
成育は植えつけた標高によって大きく差が生まれますが、一般的には植付けて3年目でジャスミンのような香りがする白色の花が咲きます。この時点でアラビカは受粉しており、直ぐに小さな緑色の実を見ることができます。ここから約半年コーヒーの実は大きくなる成長期、緑から赤に変わる成熟期を迎え、やがて収穫の時期となります。
生産国の収穫期は大きく分けると3つに分けられます。品質の高い豆は、一般的に収穫期の後半以降に収穫されます。

  • ①北半球の産地(10月~3月頃)…中米、カリブ海、エチオピア、ベトナムなど。
  • ②南半球の産地(4月~9月頃)…ブラジル、ペルーなど
  • ③赤道直下(年に2回)…コロンビア、インドネシア、タンザニア、ケニアなど

収穫には大きく2つの方法が存在します。1つは機械による収穫ですが、ブラジルの大型農園の平坦な土地のみで行われています。もう一方が手によって収穫するスタイルで、熟した実だけを手摘みする方法からしごきとる方法まで、さまざまですが、世界の大半のコーヒー農園ではこの方法です。
コーヒー生豆の最終的な品質を決める、大きなポイントは収穫するチェリーの熟度です。コーヒーの実は、一度に均一に熟しません。熟したものも未熟なものも全部一度に収穫してしまえば、作業効率は良いですが、未熟な豆が混じります。寧に熟した実だけを収穫すると、作業効率は悪い(別の日にまた収穫に行かないといけない)ですが、熟した実だけを集めることができます。

また、コーヒー豆は、チェリーの中に2個1組になって入っているフラット・ビーンズと、チェリーの中に1個だけ入っているピーベリーと呼ばれるものがあります。

5.生産処理 (精製) 方法

方法

生産処理方法には、大きく二つの方法があります。1つは水洗式、ウォッシュド(Washed)と呼ばれるもので、もう一方が非水洗式、アン・ウォッシュド、ナチュラル(Un-washed, Natural)と呼ばれるものです。
最近ではパルプドナチュラル、エコウォッシュド、ハニー、パルプドアンドデミューシレージド、セミ・ウォッシュドなど、さまざまな生産処理方法が存在しますが、一番重要な点は、どのタイミングで乾燥させるのかということです。

ウォッシュド

ウォッシュドはコーヒーの実をパルパーという機械にかけ、皮とパルプ質を剥いだのち、半日~1日程度水に漬けます。(漬けないこともある)時間がたつと豆についたミューシレージが自然発酵します。
ここで、豆を水で洗うと、ミューシレ―ジを洗い落とすことができます。その後、天日乾燥、機械乾燥(両者を組み合わせるのが一般的)を経て、薄い殻に生豆が1粒入ったパーチメントコーヒーが出来あがります。この殻を剥くと、日本で流通しているようなコーヒー生豆になります。ウォッシュドは手間がかかりますが、工程の中で未熟、過熟な実・豆をある程度取り除くことができます。世界のほとんどの国ではこの生産処理が一般的で、比較的くせのない酸味のあるのが特長です。
自然発酵の工程については、発酵させずにミューシレ―ジを機械的に取り除く方法もあり、発酵過程を通したものをフリーウォッシュド(Fully Washed)、機械的に除去したものをパルプドアンドデミューシレ―ジド(Pulped and Demucilaged)やセミウォッシュド(Semi-washed)と区別することもあります。

アン・ウォッシュド

アン・ウォッシュドは収穫したコーヒーの実をそのまま乾燥させる方法です。ブラジルとエチオピア、イエメンでは一般的な方法ですが、それ以外の国では主に国内消費向けに作られています。ウォッシュドに比べると簡素な方法ですが、乾燥日数が多くなります。乾燥した実を脱殻して、豆を取り出します。独特の香りや甘みがあるコーヒーになります。

パルプドナチュラル

パルプドナチュラル(Pulped Natural)はコーヒーの実をパルパーという機械にかけ、皮とパルプ質を剥いだのち、そのまま乾燥工程に入るものです。ミューシレ―ジは傷みやすいですが、通常のウォッシュドよりも甘味のある豆になる傾向があります。中米では、ミューシレ―ジをミエル、また蜂蜜(ハニー)のこともミエルと呼ぶので、パルプドナチュラルのことをハニーコーヒーと呼ぶ人もいます。ただ、ウォッシュドやナチュラルに比べると、パルプドナチュラルはあまり流通していません。

さらにミューシレ―ジを100%残したまま乾燥させる方法、ある程度機械でミューシレ―ジを取り除いて乾燥させる方法もあり、それぞれレッドハニーコーヒー、イエローハニーコーヒーなどと名付けられることもあります。
インドネシアのアラビカ種で見られる「スマトラ式」は、ウォッシュドと同じ工程で水洗まで行い、乾燥する前にパーチメントの殻を剥いて、生豆の状態で乾燥させる方法です。ウォッシュドコーヒーでも1〜2週間必要な乾燥期間はわずか3日程度で済みます。乾燥前の生豆は非常に柔らかいので、乾燥中に変形したいびつな豆が多くなり、独特の深緑色になります。味も独特の香りと苦みがあります。

このように同じチェリーを使っても、生産処理方法を変えると、コーヒーの味は大きく変わります。
ちなみに、カネフォラ種では、ナチュラルが多く、一部ウォッシュドもあります。

6.選別方法

選別方法

選別は、現在各国でさまざまな機械や人手を駆使して仕上げられています。
アン・ウォッシュドでは、重要な工程です。一般的には風力選別機、スクリーン選別機、比重選別機、電子選別機、ハンドピックなどがあります。当然ですが、機械に何度も通すとコストアップ、目減りにつながり、販売額(購入側にとってはコスト)はアップしていきます。
カネフォラ種では、ナチュラルで生産処理された豆を、脱殻後に磨くこともあります。ポリッシュやアフターポリッシュ(AP)と呼ばれています。

7.格付け

格付け

選別された豆は、輸出までに格付けを行います。格付けは国ごとに異なり、粒の大小でスプレモ、エクセルソと分けるコロンビア、欠点豆の混入量と大きさによって分けるブラジル、収穫された標高によりSHB、EPWなどと分けるグァテマラが代表的な格付けで、これらは収穫された標高、粒の大きさなどを示しているに過ぎず、味との関係は一概にはいえない規格もあります。
特にスペシャルティコーヒーの取引では、粒の大きさや欠点豆の混入、標高の小さな違いよりも、豆の味(カッピング)をベースに価格設定されることが一般的になっています。

8.輸出

輸出

コーヒーの貿易は、生豆で行われることが大半です。中米では、米国の大規模ロースターが生産国に焙煎工場を持つこともあり、いくつかの生産国にはインスタントコーヒーの工場もあります。余談ですが、近い将来ブラジルが世界一の消費国になるといわれ、コーヒーはもっぱら貿易される商品、という見方も変わりつつあるようです。
さて、収穫されたコーヒーが日本に入ってくるまでに、生産国にもよりますが、3カ月から半年ほどかかります。産地での生産処理、乾燥、熟成、袋詰め、港までの運搬から船積み、そして日本へ入港後も、コンテナの積み下ろし、植物検査、一部では農薬検査が行われ、ようやく出荷可能となります。
生産国内では、一般的には中間業者や農協が個々の農家からチェリーやパーチメントコーヒーを買い集め、それを加工し、脱殻して、袋に詰めます。1つのコンテナに積み込まれるロットは、通常15~18トン程度。多くの場合、多くの生産者の豆が混じったものになります。
ブラジルでは、ロットを作るのは、クラシフィカドールと呼ばれる鑑定士の仕事で、さまざまな生豆をブレンドし、顧客の指定する味を作りあげます。また、特定産地で生産・集荷された豆だけでロットを作るというものもあります。そうしたコーヒーは、顧客側のリクエスト内容によって、通常より上乗せ価格で取引されています。

9.取引

取引

コーヒーの取引は、ニューヨークの定期市場の価格をベースにして行われることが一般的です。市場では実需筋(ロースター)、産地筋(輸出業者)、ファンドなどが、日々先物商品を売買しています。ただ、ニューヨーク市場を通じて商品の受け渡しが行われるケースはあまりなく、一般的にはリスクヘッジのために利用されています。基本的に需要が多く、供給が少ないと見込まれれば価格は上がり、その逆なら価格が下がりますが、近年はファンドの動きによって変動することが多くなってきています。
ファンドはコーヒー以外にも株、国債、通貨、他の商品など、分散投資をしており、その中で利益が見込める分野に投資し、リスクのある分野から資金を引き揚げるということをしているため、多くのファンドがコーヒーに資金を投入すると、需給とは関係なく、相場が大きく上下してしまうことが度々発生します。
コーヒー豆の取引は、国際的な貿易から中間業者の農家に対する買い取り額まで、この定期市場の価格をベースに行われることが一般的です。ただ、僻地の生産地では、中間業者の競争がなく、生産者は安く買いたたかれることもあるようです。
日本国内の取引でも定期市場の価格をベースに取引が行われますが、スペシャルティコーヒー等では、品質本位な価格交渉が行われることも多々あります。